

楽茶碗は、ろくろによる均一な円とは異なり、手による微妙な変化を備えた器です。使う人の手に自然と馴染み、静かな時間を生み出すことが、その魅力とされてきました。
楽茶碗とは
楽茶碗は、十六世紀後半の京都で、陶工・長次郎によって作られはじめた茶碗です。千利休のわび茶と深く結びついて発展しました。
唐物や高麗物を見立てて用いる文化のなかで、楽茶碗は茶の湯で用いるために作られた器でした。一碗の茶を点て、両手で受け取るという行為に沿った形をしています。
花仙人の楽茶碗の特徴
ろくろを使わず手で成形すること自体は、楽茶碗に広く共通する特徴です。花仙人の独自性は、そこからさらに進んで、成形台も使わず、両手の上だけで形を立ち上げたことにあります。
そのため、一碗ごとに輪郭や手取りが異なります。指の跡や手成形ならではの起伏が、そのまま表面に残ります。
成形から焼成まで
成形 約10分 本焼 一碗 10〜12分成形はおよそ十分ほど。その短い時間のうちに、茶碗のおおよその形が決まります。その後は自然乾燥させ、箆で削って仕上げます。
焼成は、冬の乾いた晴天の日に行われました。本焼では、熱した茶碗を鉄の火鋏で窯から引き出し、水を張った鉄の容器で急冷します。花仙人の制作記録には、このとき釉薬の色が現れてくる、と記されています。
四つの記録
作陶のはじまり
花仙人は楽茶碗の制作を始めるにあたり、東京美術学校の同級生であった吉田耕三から、作陶上の指導を受けました。
粘土は、遊行寺・江の島・鎌倉で採れる青粘土や白粘土を用いました。土地の土を自らの足で探すという姿勢は、生涯を通じて変わりませんでした。
粘土を、流れる素材として
花仙人は、水分を含んだ柔らかな粘土の流れと重力を利用し、両手の上で形を立ち上げました。本人の制作記録では、この土の動きを流体力学になぞらえて捉えています。
ろくろが回転によって形を決めるのに対し、この方法では手の角度と重力、そして土そのものの流れが形を決めます。見た目より軽く、抹茶を点てるための深い見込みを備えた茶碗も見られます。下の可視化は、その成形の様子を再現したものです。
私の夢は、世界中のひとたちに
— 花仙人
自分の茶碗で、平和なお茶会を
してもらうことだ。花仙人が遺した「手で点てる時間」という思想は、
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現代において新たなかたちで再解釈されています。花仙人(加藤長一、1917–1998)/洋画家・版画家として出発し、戦後は神奈川県藤沢市鵠沼で楽茶碗の制作に専念しました。
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